タイトル
おっそろしい ステンレスパイプでここまでやるのか
著者 / 話者
null

おっそろしい ステンレスパイプでここまでやるのか

Alex Moulton New Series Double Pylon
完成車標準重量:9.5kg
価格:2,226,000円(税込)フレームキットのみ
© Embacher-Collection

ステンレスでここまでやるのか。
三角形を二つ組み合わせたダイヤモンドフレームと空気入りの大きなタイヤ。いわゆる自転車の原型は19世紀末に完成されてから100年以上変わらなかった。このモールトン自転車が作られるまでは。

故アレックス・モールトン博士は戦時中に飛行機のエンジン開発に携わり、戦後は家業であるゴム会社で自動車のサスペンションを開発するかたわら、1962年に自宅兼研究所兼工場であったイングランドの古城で、このまったく新しい自転車を作りだした。加速性能が高く空気抵抗が少ない小さなタイヤと、乗り心地を高め確実に路面をとらえ続けるフルサスペンション、小さな三角形をいくつも組み合わせた「スペースフレーム」と呼ばれるトラス構造のフレームは軽さと剛性を両立させた。

モールトン自転車の最高級モデルとして知られるこの「New Series Double Pylon」は、フレームの全ての部分でトラス構造が採用され、一本も太いパイプは使われていない。素材は航空宇宙産業で使われるステンレス304と呼ばれる鉄、クロム、ニッケルの合金鋼で耐食性が非常に高い。その細いステンレスパイプを熟練した職人の手で一本一本磨き上げ、銀ロウ付けで組み上げていく。その途方もない手間を考えると価格が高くなるのも納得できる。しかもフレームは二つに分解でき、コンパクトに収納できるので、旅先に持って行けば行動範囲がグンと広がる。

自転車乗りなら誰もが憧れる、機能と造形美を兼ね備えた究極の自転車。それがこのモールトン自転車なのだ。