タイトル
ぼくが動物だったころ 第二夜
著者 / 話者

「Work in Progress」をめぐる、編集部での会話より

大里:細川さーん、今回「work in progeress」形式でやろうとしていることって、さっき橘川さんとお話していたときに、感じたことなんですけど、天川氏(本記事の編集協力)と橘川さんとの間にズレがあった気がするんです。
天川氏は紙媒体である雑誌でやれることの極限を目指す志向があるけど、橘川さんは別に紙媒体上での表現ではなくて、例えば雑誌の持ってる「コミュニティを形成するチカラ」みたいなところに注目している、っていう。
僕も橘川さん側なんですよ、どっちかっていうと。
でもいまのぼくらがやってる「work in progress」はなぜ「in progress」かというと、えーっとその、それをどっちに振るかっていうところの「決め」がないっていう状態だからなのかなーと思ってるんです。「紙の表現として、最高のものを作るのである」というのもぼくは決めてない。じゃあ、「紙以外のところ、もうちょっと広い視野で見るとか、他のメディアも絡めるのだ」というところにもいってない。
その2方向でいくと、おそらくぼくにできることって意味で考えると後者なんだろうなーって思うんです。そもそもの志向を考えても。その視野を入れることでもっと「work in progress」がもうちょっと進むんじゃないか「progress」するんじゃないかなって。たとえば今日橘川さんと話したけど、電話ではあの話はできなかったですよねっていうことがあるですよ。
会って話さなきゃあの話はできなかったよねっていう。当たり前なんですけど。リアルに会うっていうことの大事さということでいうと、いまぼくと天川氏が書いてるこの記事って、読者の方からするとこれだけ読んでも、この紙上で表現されたテクストと絵しか理解できないんだけど。もし「work in progress」であることを理解していただいて、実際にぼくらと会って話をすれば、もっと伝わったり、ぼくら自身の考えが進むかもしれないじゃないですか? その可能性の意味を込めて、僕らの連絡先を書くっていう。「in progress」の意味というのはどうも紙上はそれなりの表現にしかなってない。僕らの直面している感じてる限界をポイントポイントで示すことによって、この作品の可能性自体を広げてあげるっていうことができるんじゃないかっていう。

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第二夜
原宿
Harajuku

今号のテーマである「正しさ」「面白さ」に「酔う」を掛け合わせると、中島らものことが頭に浮かぶ。そして頭の中がかゆくなってくる。
中島らもは確実に酔っ払っていた。じゃあ、他の人はどうなんだろう。「「正しさ」と「面白さ」のギリギリのところを攻めている人」、「正しいかどうかについてはひどく怪しいけど、確実に面白いことをやっている人」って、酔ってるんだろうか。という、ゆるゆるのお題を立ててみて、そういう人が酔ってるか確認しにいけば、何かあるかもしれない。
という神頼み。
人選にあたって、最も大事なのは、酔っ払ってるんですか?って聞いても怒られなさそうな人ってこと。怒られるの嫌だし。
そこで、いつもひどい企画ばかりで面白いWEB制作会社のバーグハンバーグバーグで、馬鹿サイト『オモコロ』の二代目編集長をされている原宿さんに「酔ってるかどうか、アルコールチェッカーを持っていくので確認させてほしい」とお願いしたら、ゆるくOK。そんなノリで、結局は「この企画どうしたらいいっすかね?」と相談に行ってきた。もちろんシラフで。

大里:はじめまして。今日はありがとうございます。今号の雑誌全体のテーマが「正しさ」と「面白さ」に関することなんで、ぼくはそれを「酒、アルコール、酒場」みたいなところで議論しようかと。
メールでもご相談したように、「確実に面白いと思われる人って実は酔ってるんじゃないか、アルコールチェッカーを持って確認しに来ました」みたいな企画なんですが。…そもそもどうしたらいいと思います?この企画(笑)

原宿:あー、ぼくがそれを考えなきゃいけないっていう(笑)

大里:そうなんです(笑)

原宿:これ、もう酒飲んだ方がいいんですかね。

大里:それも含めてご相談したいんです(笑)

原宿:(笑)もし僕以外にも同じ話を聞きに行くんだったら、他の人は酔ってないけど、このひと人だけは酔ってた。ベロベロだった。っていうのがいいかなー。

大里:酔ってるのと酔ってないの、両方のバージョン撮っておくっていうのもありかもですよね。

原宿:そうですねー。

大里:あ!酒買ってくるの忘れた。すいませんー、このへんでコンビニってありますかねー?

原宿:なんか酒だったらここにもありますよー。あるんで大丈夫です。

大里:すいません!ありがとうございます。

大里:ちょっとこの企画の見せ方からは離れちゃうんですけど、お仕事のブレストとかで飲みに行ったりすることってあります?

原宿:ごくたまにありますね。ミーティングで飲むことも。

大里:アイデア出しとかじゃない、作業のときとかはさすがに飲んでないと。

原宿:そうですねー。飲んでないですねー。まぁ普通は飲まないですよね。でもなんで、今回、「正しさ」「面白さ」がテーマなのに、アルコール、お酒が絡んでくるんですか?

大里:個人的体験だったりもするんですが、酒が入ると、正しさ/面白さがリセットされたり、違うものに変質させちゃうチカラがあるなーって思うことがあって。アルコールの脳に対する直接的な効果なのか、酒を飲む場の雰囲気のせいなのか。なんだかわからないんですが、自然と凝り固まってしまっている「正しさ」とか「面白さ」、そのあたりを曖昧にしてくれるものとして酒があって。だから面白かったり、なんかギリギリ攻めてるひとたちって、酔ってるんじゃないかと。

原宿:なるほどー。そこに関わってきてたんですね。やっとわかりました(笑)。
意味がよくわかってなくて・・・・・・。なんで、アルコールチェックをするのかな?って。

大里:意味分からないまま、お受けいただいてありがとうございます(笑)

原宿:じゃあ、泥酔状態で現れて、最初から意味のわからないことをベロベロな感じで話すとかでもいいですかねー。

大里:いいと思います。というか、いまこうやって相談してる話を全部書いちゃう。「酔ってる方がいいですかね~?」みたいな(笑)

原宿:この部分も全部載せちゃうっていう。

大里:はい。だから、酔ってました!ってことでも、酔ってません!ってことでも、どちらでも行いいじゃないかなとおもって思ってます(笑)
アルコールチェックする前にいろいろ聞かせて頂きたいんですが、普段、オモコロをはじめとしたお仕事をされてるとき、制作にあたって気をつけてることってありますか??

原宿:意識してるのは、ギリギリまでいくというか。クライアントのラインをまたいじゃう。クライアントの許容範囲というか、こういうものがでてくるだろうっていう予想、この中に入ってくるだろうなっていうのが100なら、125まで一回振り切っちゃう。自分たちが良いと思うことをまずぶつけて、125をぶつけて100になればいいと。100をぶつけて75にされるのは嫌だなーと。

大里:なるほど。クライアントワークだとそういうことだと思うんですが、オモコロだと振り切りってどういう風にされてるんですか?

原宿:オモコロかー、オモコロでの振り切り。正直、何があたるかわかんない部分があるんで。結構ひどいのでも当たったりするんですよ。自分の中でダメだなって思ったのがバズったりとか。

大里:例えば?

原宿:例えば、男が女もののパンツを履いて相撲をとるっていうのがあったんですが、企画を見た段階ではちょっとダメだろうなと。というか意味がわかんないし。全然受ける要素ないだろうなって思ってたんですけど、ソーシャルに載せてみると、「ひどい!」って言いたさにみんなツイートしちゃうっていうのが起こって。
だから、どういうことなんですかね。男は女もののパンツを履け。ってことなんですかね(笑)

大里:逆に言うと、こりゃダメだと思ってやってみたらやっぱりダメなものもいっぱいあって。その辺の違いはよくわかんないと。

原宿:あー、あります。その辺の違いはわかんないですね。中には話題になるものもあって、その中からときどきヒットが生まれるんで。他にこういうひどいことをやってるメディアってないですから、ぼくらの守るところとしては、ひどいことをやりつづけるっていうのが大事だと。

大里:クオリティを上げた学生ノリっていう感じがすごくするんですが。大学生の時って、こういうノリのやついっぱいいたなーって。(原宿さんと)同年代だからかもしれないですが。

原宿:たしかに学生ノリってよく言われますね。でもぼくら、リア充みたいなひと人はいなくて。全員暗くて、部活もやってない、サークルやってない、友達いない。全員そういう人間なんだけど、そういう人間が集まった地獄の底がここだった。居場所がなくてなくて。でも面白いことはやりたい。芸人とか作家になる勇気もない。でもなんか表現したい。っていう意味でネットは受け皿になってくれたんです。オモコロがそういう若い人の受け皿になれればいいなって思ってます。

大里:さきほどの振り切るという話なんですが、オモコロの場合、自分でジャッジするしかないじゃないですか。自分に125つきつけるって難しくないですか?

原宿:基本オモコロはNGがないんです。ゼロではないんですが、NGはない。だから、個々のライターの判断にまかせる。一回だけ、股間に入れるモザイクの範囲で喧嘩したことはあります。これはモザイクの範囲がギリすぎる。これはキワキワすぎる。もうちょっと全体にぼかしを。みたいな。(笑)

大里:その場合のNGの理由って、どういうものなんですか?

原宿:さっきのモザイクの話だと、ブログのサービス側の規約がありまして。あまりにもモザイクが薄いとアダルトサイトになっちゃって、そういうのはやっぱNGなんですよ。オモコロでOKにしちゃうと今後全員にOKにしないといけなくなるので、やめてくださいって。だからオモコロを続けるためにもモザイクの範囲だけは守ろう!って。

大里:基本、じゃあサービス規約。あとは法律?

原宿:そうですね、法律に反しちゃいけないなーと。

大里:法律って、日本における最大の正しさなのかもしれないなーみたいな話をしてるんですが、法律って意識されることってありますか?

原宿:あります。ぼくらよく公共の場で脱ぐんです。あれは、パンツさえ履いていれば法には反していない、っていう。なんか本当にそうみたいで。股間さえ守っていれば法には触れてない。ただおまわりさんには注意はされるんですけど。
パンツ一丁で外にいる事こと自体は法律違反ではない。最低限逮捕されない。っていうのは、調べてるんです。

大里:それ、絶対酔ってないですね。

原宿:結構冷静に。その辺りは冷静ですね。冷静に法律を守ってる。やっぱり外で脱いで大丈夫かどうか、ライターとかも怖がるんで。その恐れを解消してあげる手段として、「パンツさえ履いてれば、日本の法律の法律に違反はしてない」「親には迷惑をかけない」という勇気を与える。そのあたりはフォローしてるとおもい思います。

大里:もう一つ相談なんですが、そもそもの話。この企画の見せ方なんですが。通常記事を書くときって、普通ゴールをきめてから書くじゃないですか。今回の場合、着地点があっての取材ではなく、まだ結論が出てないんですけど。この感極まった状況どうしたらいいでしょうか? 決まってるのは、紙がただ見開いている。ということしか決めてないんですよ。明後日締め切りなのに(笑)

原宿:いいですねー(笑)。例えば、写真が全部ぶれているとか。誰に何をきいたか覚えていないとか。誰かがなんかこういうことを言っていたような気がするみたいなの。

大里:昨日の橘川幸夫さんのインタビュー写真で、たまたまぶれてる写真があったんですが、わざとちシャッタースピード調整してとって撮ってみますか。

(写真をとる)

原宿:良い感じでブレてますねー。

大里:もう、お遊びになってますね(笑)

原宿:カメラって楽しーみたいな(笑)。ぼくの写真は、それで良いです。ボヤボヤのヤツ。

大里:じゃあ、とりあえず飲んでもらって、アルコールチェッカーしてみますか。