タイトル
だれから買うかも、「味」のうち
著者 / 話者
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だれから買うかも、「味」のうち

上賀茂産京野菜

万願寺唐辛子
入数:5本
価格:200円

白菜漬物
価格:250円

京都鴨川にかかる四条大橋、祇園と河原町の間を行き交う観光客でごった返す歩道に、手押し車に野菜を満載にした農家のおばあさんがいる。荷台の上には、上賀茂の畑でその日の朝に採ったばかりの、九条ネギ、万願寺唐辛子、金時にんじんなどの伝統的な京野菜と、お手製の干し柿やつきたてのお餅、白菜漬けなどが並んでいる。うっかりそこで立ち止まろうものなら、試食で配っているミニトマトを渡され、おばあさんと世間話がはじまってしまう。世間話をすると情がわいて、当然、野菜も買ってしまう。肉厚の大きな万願寺唐辛子が5本で200円。旅の思い出とおばあさんのスマイルを一緒に買ったと思えば安いもの。実際にスーパーの価格と比較しても安いし。なにより、圧倒的にうまい。
しかし、ふと考えると、本来買い物とはこういうものなのではなかったか、と気付く。何枚もチラシを比較して、一円でも安いものを買いにいくという習慣は、農耕民族の長い歴史をふまえると、ほんのつい最近はじまったばかりのことなのだ。
産地と売り方とモノの関係。おばあさんの顔と京都弁、橋の上からみた景色を思い出しながら食べる京野菜は、格別にうまい。