タイトル
0→1→100万 新しい「1」の作り方 Local Motors
著者 / 話者

アメリカの・アリゾナ州で、ローカルモーターズという会社のマイクロファクトリーが賑わっている。このマイクロファクトリーで生産されているのは、ローカルモーターズが2000台限定で販売しているラリーファイターだ。
ラリーファイターは、一見すると高級なレースカーのようにも見える。戦闘機をモチーフにデザインされた車体は優雅で、力強く、どこでも好きなところに行くことができる!とわくわくさせられる。だが、ラリーファイターは、ただお金を出せば手に入るわけではない。”あなた自身の手で”この車を作らなくてはいけないのだ。
この大量生産を前提としない、ユニークな車を生産•販売しているローカルモーターズのCEO ジョン•ロジャーズに話を聞いた。
ローカルモーターズは自動車産業で、大量生産を前提としない「1」のあり方を突き詰めていけるのだろうか?

ローカルモーターズのアイデアはどうやって生まれたのですか?

ローカルモーターズのアイデアは2004年に思いついて、2005年からビジネスプランを作り始め、2007年に会社を設立しました。
2004年、私は海軍の一員として、日本の自衛隊やイタリア軍と一緒にイラクに派遣されていました。自分たちの車を走らせるために必要な石油の量のために、世界は自分が思っていた以上に危険な場所になっているのだと、イラクで友人2人を亡くして初めて気がついたのです。このことは、誰の目から見ても非常に明らかなイシューなのですが、だからといって必ずしも誰もがこのイシューを解決しようとしているわけではありません。私はこのイシューを解決したいと心の底からそのときに思いました。
私は家電産業やアパレル産業が、自動車産業よりも非常に早く変わっていくことにインスパイアされました。きっと自動車産業の人に言わせたら、自動車は作ることが難しくて、法的な規制もたくさんあって、自動車自体が危険なもので、そして高価なものだからこそ、変わっていくことが難しいと答えることでしょう。確かにそれは至極全うな、”正しい”理由なのですが、私はそうした現状を受け入れた上で、イシューを解決するために、自分に何が出来るのかということを深く考えるようになりました。その結果として、ローカルモーターズのアイデアが生まれてきたのです。

大量生産を前提としている今の自動車産業は、一体何が問題なのでしょうか?

今日の自動車産業の問題点は、巨大な資本によって補強された長い購買プロセスにあると考えています。だから自動車の1モデルを作るのに5年から7年のサイクルがかかりますし、そのモデルを作るために何億ドルもの投資を行わなければなりません。投資を回収して、収益を得るためには、最低限売らなければならない車の数が決まっています。さらに自社ですべてをこなすことなんてできないのですから、自動車の流通網やディーラーの販売網も整備しなければなりません。つまり、この現状を単純に見てみると、すでに莫大な投資をして動き出している5~7年の計画があるために、自動車に使われる技術は早く変化することができないということがわかります。このことが何を意味しているのかと言いますと、他の産業に比べて、製品に実装される技術の進歩を遅くしてしまう状況が既に構造として出来上がってしまっているために、「マスカスタマイゼーション」などの最近出てきた新しい物事があったとしても、すぐにはそれを取り入れることができないということです。しかし、私はこうした現実を受け入れた上で、この問題点を変えていこうと決めました。
実際にどんなことをしているのかといえば、私たちは、車を作るための投資額を少なくしています。このことで最低生産量や最低販売量を極力減らして、自動車を作るために何年も使わなくても済むようにして、技術の進歩にこれまでよりも早く追いつくことができるようになりました。これは非常にシンプルなやり方です。しかし、少ない資本金で自動車を作ることは、非常に困難なことです。だから私たちは、何故自動車を作るためにそんなに多くの資本を必要とするのかを紐解いていきました。すると多くの理由が見えてきました。
例をあげるとしたら、まず「規制」です。先進国では、規制は非常に厳しく強固なものになっていますが、発展途上国ではそんなことはありません。この厳しい規制をクリアするためには、非常に多くの資本を必要とします。
他にも車を作るために必要な労働者の人件費の問題もあります。法律や伝統によって、労働を長期間保証しなければならない国というのもあります。労働者自身が問題となることもあります。例えば、私は自分の車を鉄で作るために、多くの鉄工所の工員を雇っていますが、もし技術が変わってしまって、もはや鉄で自動車を作りたくなくなったとしても、工員が別の技術について再教育されることを期待したり、再教育されたくないと思ったり、再教育できなかったり、労働組合がそれを許可しなかったりすることに対して何も対処することができません。
私が言っていることは、自動車産業で今後発展していくために必要な素早さを持つ上で、そもそも自動車産業が持っている根本的な矛盾なのです。

大きな市場を目的としないとき、どんなことが可能になるのでしょうか?
もしニッチなコミュニティを見つけて、そのニッチなコミュニティのための製品を売っていくとしたら、私たちが売るものは全て、マスプロダクト(大量生産される製品)とは定義できない、別のものになります。私たちは、それが一体どういうものなのかを知ろうとしているのです。だから例えば出張のためのレンタカービジネスは、市場を満足させるためには何百万もの大量のレンタカーが必要となるので、私たちにとっては最悪の市場になります。でももし、格子状に町が出来ているニューヨーク市で駐車をするための特定の車を作るだとか、サンパウロに住む特定の人たちのためのバイクを作るのだとしたら、それは何百万台を作るのとは正反対に、数千台さえ作れば市場を満たすことができるのです。しかしこの場合でも、規制をクリアするためには、まだたくさん投資をする必要があります。例えば、エアバッグのプログラムを調整して、車に組み込めるように品質保証するだけで、材料費を除いて600万ドルものお金がかかります。
だから私たちは発展途上国や、規制の少ない先進国の市場の優先順位の高くすることに決めました。とはいえ、これは何も車の安全性を無視しているというわけではありません。出来る限り安全性を高めた上で、小さいボリュームの市場にその市場を満たす自動車を投入しているのです。
投資額を少なくした上で、OEMの車よりも安全性を高めることが果たして本当に可能なのか?というのは本当にチャレンジングな問いです。だって、一般的な車には全てエアバッグがついているのですから。しかし、この問いをよく考えてみると、あることに気がつきます。それは一般的な車に採用されているユニット式の車体構造は、スペースフレーム方式に比べると強度が弱いということです。しかしユニット式の車体構造の方が大量生産には向いているため、現在ユニット式の車体構造が多く採用されています。
この事実を知ったとき、もし大量生産を前提とした車を作らないのならば、シャーシを溶接するスペースフレーム方式をつかって、車体構造をより安全なものにすることができるのだと思いました。少量生産だからこそできることがあるのです。
他の例をあげてみましょう。アメリカでは、シートベルトをしていなかったとしても消費者の安全を守るように定められた規制があります。だからこそエアバックが非常に重要になってくるのです。この規制が消費者に対してシートベルトをしないことへの注意を呼びかけているのだとしたら、私たちは世界で最も安全なシートベルトを提供しようと決めました。私たちは3点支点と5点支点のハーネス型のシートベルトのどちらも提供しています。このシートベルトをしている限り、正面やサイドのエアバックが必要ないくらいしっかりと、窓や天井も頭に近づかないように乗客をその場に固定します。しかし、もしシートベルトをしていない状態で事故にあってしまったら、そのときは事故のなすがままにされてしまいますけれども。
このように私たちは、日本やアメリカやヨーロッパのような先進国の車の巨大市場に投入するための巨額の資金を節約しつつ、そうした市場の車とは違うセグメントの車をつくることにしました。とはいえ、ある部分では節約しながらも、投資すべきところでは投資できるので、自動車に搭載する技術をどんどん進化させていくことができます。このような考えが他にもいくつも生まれ、そして統合されて、今のローカルモーターズとなりました。
また、2005年から2007年の間に、年齢やバックグラウンドの異なる様々な人たちにインタビューをしました。そのとき、もし自分の特別なニーズに応えてくれるような車があるとしたら、どんな車が欲しいかと聞いてみたのです。ほとんどの人は、miniや三菱などといったブランドで自分の欲しい車を語りました。おもしろかったのは、欲しい車を語るのに、他の車の特性や特徴を使って語る人たちがいたことでした。好きな音楽の種類を聞かれたら、多くの場合、他の芸術と同じように、クラシカルが好きだとかアップテンポ、現代的な音楽が好きと答えますよね?車を語るときには、ブランドを使って語ります。私は、この意識を変える必要があるのと思ったのです。
そこでローカルモーターズでは、車やデザイン、エンジニアリングについての造形が深いクラウドコミュニティから生まれる良いアイデアを積極的に取り込めるようにしています。これは良く知られている部分ですけれども。 個人をまとめてコミュニティをつくるときに、彼らに「本業が変わるほどではないけれど、ちょっと裕福になれるくらいのお金をここで稼ぐことができる」と、動機付けを行いました。命令などではないので必ずしもする必要はないのですが、それでも動機付けを行うことによって、コミュニティに参加して貢献したいと思ってくれる人たちが出てくるだろうという考えていました。
そしてその後、彼ら自身が考えて、「今これをやるべきだよ!」と多くの課題を出してくれるだろうと考えていました。まずはコミュニティの意見から課題を抽出して、彼らのニッチな要求を満たす少数生産の車で、課題を1つずつ解決していこうとしたのです。このアイデアを、BMWやメルセデス、ホンダに持っていって実現してもらうのではなくて、小さなボリュームの市場と、小さなマイクロファクトリーの中で、自分たちでこのアイデアを実現させようと決意しました。
こうして私たちはビジネスを始めました。ここで重要なのは、私たちは自分たちのことを、単に「ラリーファイター」という車をつくるオフロード車の自動車会社とは考えていないということです。私たちは、ローカルモーターズを乗り物全般に関する、ビークルイノベーションの会社なのだと考えています。私たちは、発展途上国や先進国にある乗り物や、乗り物の付属品も全て、ビークルイノベーション産業の一部だと考えていて、ビークルイノベーションを起こすためのコミュニティを育てています。

そういったコミュニティを育てて、そしてマネジメントするときにコツというのはあるのでしょうか?

コミュニティを育てて、マネジメントすることが1番難しいところです。できれば簡単で、仕掛けがあるのだと言えればいいのですが。結論から言えば、簡単な方法なんてありません。もしあなたがエンジニアマネージャーやデザインマネージャーだったら、チームにスケジュールを提示して、課題を与え、今どんな作業をやっているかチェックしますよね。コミュニティをマネジメントする役もそれと同じように、「テクニック」というのはあります。もしトヨタの創業者の豊田佐吉や、フォード創業者のヘンリーフォードがインターネットのあるこの時代に生きていたとしたら、きっと看板方式などどは、違うプロセスをデザインしていたことでしょう。でも彼らの時代にはインターネットがありませんでした。
私たちは、彼らから受け継いだ時代に生きていますが、彼らの考え方を踏襲していくだけではなく、彼らとは全く違う考え方をしていく必要があると思います。私たちはWeb2.0や3.0によって、より大きなグループを、タスクによって効果的にマネジメントすることができるようになってきました。これはソフトウェアの領域だけの話ではなくて、ハードウェアの領域でも同じことが言えます。

既存の巨大な自動車会社とは共存していけると思いますか?

自動車産業全体を一杯のグラスに例えてみましょう。既存の大企業はそのグラスの中にたくさん入っている大きな石です。でもその石同士の間には、たくさん隙間が出来ています。ここに砂を注ぎ込めば、隙間を埋めることができます。このとき、石はグラスの中に変わらずにあり続けるし、砂も同時に存在しています。消費者にとっては、より良い環境になるでしょう。
ここの例えでは、より技術の進歩が早くて、最新のハイテク領域で戦うニッチな自動車会社が砂で、技術の進歩は遅いけれどより堅実に大きなマーケットで戦う大企業が石なのです。どちらも同じグラスの中に存在していて、 石の割れ目に砂が入ったり、石が動いて周りの砂を動かしたりと影響を与え合いますが、根本的に別の領域を埋めていて、お互いを補完しあって、消費者のニーズを埋めているのです。
だから私たちは、巨大な自動車会社と強い関係を持つことを非常に大事なことだと思っています。私たちは共存しあって、相乗効果を生むことができるのですから。

ローカルモーターズでは、どんな未来を描いていますか?

まず今後10年間で100箇所のマイクロファクトリーをつくるのが今の目標です。マイクロファクトリーは、アメリカだけではなくて、世界中の至る所に作ろうと思っています。アメリカには300万台の車がありますが、世界中では10億台の車があります。先進国には、これ以上の車は必要ありません。世界では40億人も乗り物を必要としている人たちがいるのです。彼らはドイツや、豊田市や、デトロイトでつくられた車が必ずしも必要というわけではりません。彼らが必要としているのは、彼らが住んでいる場所できちんと動くものであって、ローカルモーターズはそういったものを提供できると思っています。ローカルモーターズから、世界で初めて消費者の手から生まれたジョイスティックで動く車や、自動操縦の車、水素で動く本当の地産燃料車が生まれてくることを望んでいます。
私は巨大な自動車産業が消えるとは思っていません。むしろ私たちが今後やっていくことと、これまでやってこられたこととの相乗効果によって、自動車産業はより成長していくと思います。ただし、これまで私たちがつくってきたコミュニティの精神を破壊することになるので、 ローカルモーターズ自身が大企業になるということはないでしょう。
私たちのビジネスの優位点は、複製するのが難しいコミュニティを作り上げたことにあります。大企業になっていくことはありませんが、将来的に、私たちのコミュニティが国際的に認知され、そしてコミュニティのほとんどが北米の外に存在しているように世界中に広がっていくために、私たちは今、全力で動いています。
そういう未来を、ローカルモーターズは見ているのです。

ラリーファイターのスペック
Exterior Hardpoints
Overall Length:
• 189 inches (4800mm)
Dual Ride Height
• (Manual Capability)
Overall Height:
• 69.25 inches (1759mm) High ride height
• 61.25 inches (1556mm) Low ride height
Overall Width:
• 80 inches (2057mm)
Wheelbase:
• 115 inches (2921mm)
Track Width:
• 69.5 inches (1765mm)
Curb Weight:
• 3,800-4,000 lbs.

Chassis
Construction:
• Tubular steel space frame
Front Suspension:
• 18″ travel, independent double A-arm
Detachable Stabilizer Bar
• Spring System
• - Long travel coil-over shock absorbers
Rear Suspension:
• 20″ travel, 4-Link solid axle
Lug Pattern:
• 6 x 5.5
Steering:
• Power assisted rack and pinion
Brakes, Wheels, Tires
Brakes:
• 4-Wheel disc brakes
Front:
• 13.9″ ventilated – dual-piston floating
Rear:
• 13.9″ ventilated – single-piston floating
Wheels:
• 17″x8″ aluminum alloy
Tires:
• 275/70R-17 (High Ride Height)
• 265/50R-20 (Low Ride Height)
Drivetrain
• 6.2 Liter, V8 Engine
• Automatic Transmission
• 430 Horsepower @ 5,900 rpm
• 424 lbft @ 4,600 rpm
• Rear Wheel Drive
• Approved as 50 state emissions-compliant
Design
• Sangho Kim
Interior
• Mihai Panaitescu
Side Vent
• Raphaël Laurent
Kickplate
• Anthony Franze