タイトル
いるかに乗った少年
著者 / 話者
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いるかに乗った少年

LZR RACER(レーザー・レーサー)
発売:2008年夏(日本向け)
開発:aqualab(スピードインターナショナル内研究開発チーム)
写真提供:株式会社ゴールドウィン

ヒトのからだは、水の中で泳ぐようにはつくられていない。
水かきはついていないし、骨格はデコボコだし、手足は長過ぎるし、皮膚にはところどころ毛が生えている。水中で最速の生物は時速100km以上で泳ぐバショウカジキといわれているが、同じ哺乳類で考えると時速70km以上で泳ぐイルカやシャチになる。はたして人はイルカになれるのか?

水から受ける抵抗をいかに抑えるか。泳法技術を高めるのはもちろんだが、ヒトである以上超えられない一線がある。その壁を人間のテクノロジーで超える、それが競泳水着の世界だ。2008年にこの「LZR RACER」が発表され、同年開催された北京オリンピックではトップ選手が着用して世界記録とオリンピック記録が相次いで更新された。全身を3Dボディスキャナで計測して、身体を流線型に近づける立体裁断無縫製で作られたこの水着は、着る時に選手の他に二名のスタッフが必要なほど身体にぴったりと密着し、水の抵抗を極限まで減らす。

2010年以降、国際大会で使用禁止になってしまったが、ヒトの壁とルールの壁を超えるべく、いまも世界中の技術者がしのぎを削っている。