タイトル
「インターネット」が時間を「盗む」
著者 / 話者

『広告|恋する芸術と科学』特集|非言語ゾーン|言葉にならない感動が世界をつくっている 2014 年1 月号収録

「インターネット」が時間を「盗む」

西村博之[元2ちゃんねる管理人]


2ちゃんねるは、時間泥棒としての才能がすごくあるものだと思います。

西村|テレビや漫画などは、放送時間が終わったり、ページが終わったりすると、終了してしまう。
でも、ネットは、WikipediaもYouTubeも2ちゃんねるも、終わりなく広がっているものじゃないですか。
人々が興味のあるコンテンツを大量に用意すれば、どこかで引っかかるだろうというのは、どのウェブメディアも考えていることだと思います。ただ、2ちゃんねるとの違いは、コンテンツの作成者がユーザーで、膨大な量が存在するということです。

ユーザーに対して時間をかけてどうなってほしい、時間泥棒をこういう風に使ってほしいというイメージはありますか?

西村|いやー、好きに使えばいいんじゃないですか?(笑)いやがらせとかじゃなければ。

西村さんは、元々楽しんでほしいと思って作られたのですか?

西村|たとえば物事を調べて、その答えがあった時に「楽しい」というのなら、それも一つの目的だと思います。大量の情報があれば、楽しむために使う人もいる。盗まれたいというよりは、やりたいからやる、その結果として盗まれているんじゃないでしょうか。ぼくは、その場所を提供しているだけです。

時間泥棒の中にも、SNSのようにユーザーがコンテンツを作るものと、1:nのマスコンテンツがありますよね。

西村|やっぱり、1:nのコンテンツは、減ったんじゃないかと思います。例えば最近流行ったもので、「あまちゃん」や「半沢直樹」がありますけど、「こういうのが流行っているとみんなが話している」という状況もあるから見ている。「あまちゃんが流行っている」という情報があるからみている、という側面がありますよね。そうすると、コンテンツそのものに価値を感じているというよりは、そういうコンテンツに対してみんなでとやかく言いあう状況自体に時間を投資しているので、作品の力だけで勝つというのは少なくなったのではないでしょうか。

いま西村さんが気になっているサービスなどで、時間泥棒になるものはありますか?

西村|特定のコンテンツではないですけど、物事の進み方がものすごく速くなっている
と思うんです。例えば、今だとユーザー100万人くらいはすぐ達成してしまうんですよね。素人が作ったクッキーのゲームや、艦隊これくしょんといったゲームが数ヵ月で100万超えたりとか。そんな風に物事の進み方がすごく速くなっているんですよね。コンテンツ自体が飽きられること、人の飛びつく速さと去り方がものすごいスピードになっているのが、面白いですね。

それに関連するかもしれないですが、0から1を作ったコンテンツが今はすごく減ってしまったと思うんです。そういうことを達成したコンテンツは、息が長いのではないかと思いますがいかがでしょう?

西村|クリエイターがちゃんとコンテンツの再生産を行っているならば、時代に合ったものが出てくると思うのですが、何となくふわっと流行っているものは、ふわっと人が去っていくから、速いんだと思います。
でも、1から100ということが何なのかということでいうと、例えばテレビ番組はある程度フォーマットは決まっているじゃないですか。でもヒットがある。純粋に1から100の話ではないと思います。むしろ、入手性ではないかと。
入手が容易でつまらないものって、入手しやすいからやるんですよね。でも、どこかでつまらないと気付いてやめてしまう。ソーシャルゲームって、こっちなのかなと思います。
少し前だと、子どもたちは音楽CDを買わなかったじゃないですか。あれは、友達からもらったりネットで落とすものであって、買ってるやつはバカだという風潮さえあった。そして、今はソーシャルゲームをやっているやつはバカだという風潮。だんだんそういう風に、物事に対しての見方は変わると思うんです。だから、入手性のほうが大きいのではないかと思います。

入手性もそうですし、入手したことにたいする意見・反応の表わしやすさもありますよね。

西村|他人の消費行動をとやかく言うようになったのは、確かに最近のことかもしれませんね。昔は、他人の消費行動なんてどうでもよかった。いちいち、自分の消費行動を他人に言わなかったですよね。今は、TwitterやFacebookで書いちゃったら、全員見る。そして総ツッコミ。それで、それを見た人が、「あ、これって買うとバカにされるんだ」と気付き、二の足を踏む。行動を逐一アップする人がいて、その人たちの行動や反応をみて、「これをやってはいけないんだ」「これはやったほうがいいんだ」というルールができやすくなったんじゃないですかね。

時間泥棒として2ちゃんねるが無価値になることは起こると思いますか?

西村|今がベストな状態だとは思っていないので、よりよいモノが生まれればユーザーはそっちに行くだろうと思いますね。
きっと、もう少し儲かったらライバルが出てくると思うんです。そして、儲かりだすと何かが変わる。
2ちゃんねるも自由な書き込みを制限して、きれいな書き込みと広告だけのサイトにすれば、直近の売上は上がると思うんです。そして、似たようなサイトと同じような感じになって、埋もれていく。
時間泥棒を成立させるには、TwitterやLINEのようにコミュニケーションさせる場を提供し続けることなんだと思います。そして、コミュニケーションすること自体は、そんなに変わらない目的だと思うんです。相当な栄枯盛衰が、速いスパンで訪れるんでしょうけど。

2ちゃんねるはその中でも息が長いですよね。

西村|そもそも、コミュニケーションの場はそんなに儲かるものではないのに、儲けようとするから、失敗が生まれるのではないかと思います。上場だとかによって、儲けようと思うとコミュニケーションによって得られる儲けで賄えなくなる。
そもそも、「10億人に対して広告が打てる」といっても、そんな広告主はほとんどいないじゃないですか。やっぱり、コミュニケーションって、そんなに利益率が高いモノじゃないと思うんですよね。