タイトル
600年目、3年目の硯作り
著者 / 話者
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600年目、3年目の硯作り

雄勝硯
原料:雄勝玄昌石
比重:2.7

最近では多くの小学校で、プラスチックの硯にボトル入りの墨汁を注いで書道をするそうだ。カバンを軽くし、墨を擦る時間を短縮するためだ。真っ黒な硯に水を注ぎ、墨を擦りながら心を落ち着かせ、半紙に向かって精神統一する。そんな時間が失われつつある。宮城県石巻市雄勝町は600年以上前から硯の産地として知られ、江戸時代には伊達政宗も愛用し、昭和の最盛期には職人が300人以上、国内の硯生産の約9割を誇った。しかし近年、書道人口の減少と、安価な代替品が出回り需要が減っていたところに東日本大震災が追い打ちをかけた。雄勝硯の製造販売を手がける雄勝硯生産販売協同組合は津波で生産設備を失い、震災前に11人だった職人の数は1人になった。

約2億5000万年前の地層から採掘される雄勝玄昌石を、600年続く彫りの技術で、1人の職人が硯に仕上げる。きめが細かい上質の雄勝硯を使えば、墨を撫でるだけで硯に食いつき、おどろくほど軽い力で墨を擦ることができる。古くなっても表面を磨き直せば新品同様によみがえる、半永久的に使える一生モノの硯だ。2014年には若い日本のデザイナーたちがデザインする、現代の生活に合った新しい雄勝硯も登場する予定だ。
雄勝硯はただ重いだけではなく、600年の歴史と震災後3年の苦闘の重みが詰まっている。